これからの写真

【枕】 應長のころ、伊勢の國より、女の鬼になりたるを率て上りたりといふ事ありて、その頃二十日ばかり、日ごとに京白川の人、鬼見にとて出で惑ふ。「昨日は西園寺に參りたりし、今日は院へまゐるべし。たゞ今はそこ〳〵に。」など云ひあへり。まさしく見た…

これからの写真【プロローグ】

【プロローグ】 8月7日に愛知県美術館へ行った。「これからの写真」展の会場内、畠山直哉氏、鈴木崇氏、新井卓氏を見終わり、田代一倫氏の展示室に入ったところで、入口近くの畠山直哉氏の展示室の方から大きな話し声が聞こえて来た。後で調べてみたら、それ…

絵画の在りか

「絵画の在りか」展を見た。一瞬「絵画の在りか」の「(の)在りか」を「在りや」に空目した。「絵画在りや」。勿論「東京オペラシティ アートギャラリー」の壁に「絵画」は「在る」。しかしその「『絵画』が『在る』」という事こそが曲者だ。果たして「絵画…

東京都現代美術館三題「ミッション[宇宙×芸術]」「クロニクル1995−」

【承前】 【ミッション[宇宙×芸術]−コスモロジーを超えて】 中学1年だった1969年8月14日に静岡県袋井市で見た星空が忘れられない。後にも先にもこの時の星空が、未だに自分にとって最高のものだ。 その日親戚の家がある袋井に、母親と弟と共に到着した時には…

東京都現代美術館三題「ワンダフル ワールド」

休日に子供と遊びに出掛ける場所の一つに公園がある。市内には大きな公園が幾つか存在している。観光名所がそこに併設されていたり、或いは観光名所の周囲を公園化したりと様々だ。 法的瑕疵を排除する事を目的の一つとして綿密に整備された公園(例:代々木…

ジャパンバーガー

そういう訳で、2014年の FIFA ワールドカップブラジル大会の決勝戦は、ドイツとアルゼンチンの間で戦われ、ドイツの優勝で幕を閉じた。たった5日前の話だが、随分と昔の様な気もする。 日本人はこの決勝戦に日本代表が残っている事を何処かで夢想していただ…

かたちの発語

少し前の話。知己のN氏(3歳)がこちらに近付いて来ると、氏が折り紙で作ったものを見せてくれた。 N氏は屈託無くニコニコ笑って何も言わない。 横にいた御母堂が、それが「何」であるのかを教えて下さった。緑色が「飛行機」で、青色が「新幹線」である。「…

田村画廊ノート(後)

【承前】 六〇年安保で一身上にも様々なことがあり、その後遺症や虚脱感から何とか人並みの生活感覚を得るまで十年の歳月が過ぎ去っていた。朝鮮動乱の特需景気を受け、日本の経済は繁栄に向かっていたし、世情は六四年の東京オリンピックを前後して随分と賑…

田村画廊ノート(前)

明日6月15日まで、京都三条通り沿いの「アートスペース虹」で、資料展「田村画廊ノート」が開かれている。「田村画廊」が何であるのかの説明はここでは省く。その名前を良く知っている者にとっては極めて重要な画廊であり、知らない者にとってはどうでも良い…

代表選出(第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展)

世界各地にその「名所」は存在する。 List of locations with love locks http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_locations_with_love_locks 愛の南京錠(Love padlocks)とは恋人たちが永遠の愛の象徴として南京錠をフェンスや門扉、橋などの公共設備にかける…

ヤンキー人類学(後)

【承前】 阿部渉アナウンサー 「さあ続いて、今注目されているキーワードについて、郄木アナウンサーです。」 郄木康博アナウンサー(リポーター) 「おはようございます。そのキーワードが、こちら。『ヤンキー』です。 1970年代、暴走族や不良といわれ…

ヤンキー人類学(前)

初めて福山駅に降りた。福山駅の新幹線ホーム(3階)は相対式ホーム2面上下2線であり、その2線の内側に上下通過線2線が通る。のぞみ101号(下り)に乗車した為に、途中駅で乗り換える事無く福山駅に到着した。 対面する上りホームの窓越しに福山城の天守閣や…

北加賀屋クロッシング2013 MOBILIS IN MOBILI –交錯する現在 金沢巡回展

2015年3月に「北陸新幹線(長野経由)」が金沢まで延伸開業する。速達型列車「かがやき」で東京ー金沢間は2時間25分前後に「短縮」される(現在は3時間47分)。東京ー金沢間の2時間25分は、東海道・山陽新幹線の東京ー新大阪間と同じ時間(「のぞみ」)だが…

アンドレアス・グルスキー

昨夏「国立新美術館」で「アンドレアス・グルスキー」展を見た時に、何故か個人的な「懐かしさ」を覚えた。16時過ぎに入場というタイトな観覧だったので、その「懐かしさ」が何に由来するものかを、その時に突き止める事は叶わなかった。 以来「アンドレアス…

MOTアニュアル2014 フラグメント―未完のはじまり

「ファーブル昆虫記」(Souvenirs entomologiques=昆虫学的回想録)で知られる、ジャン・アンリ・ファーブル(Jean Henri Fabre:以後「ファーブル」)のブロンズ像二体である。「立像」は、サン・レオン(Saint-Léon)の生家(現 "Micropolis" 内)前に建…

油断/VOCA展2014/B-things and C-things at A-things

東京都千代田区北の丸公園1-1(気象庁露場)の気温=「東京都心の気温」が22.2度になった3月最後の土曜日に、「上野の森美術館」に足を運んだ。 「Yahoo!翻訳」に「上野の森美術館」を入れてみると、その英訳は「Forest Museum of Ueno」になるが、「上野の…

サンプルボイス

新横浜で新幹線を降車した。いつもの様に、EX-IC と Suica という二枚の非接触式 IC カードを重ね、自動改札機のリーダー部に接触させて「在来線」JR 横浜・根岸線に乗り換える。 Suica(SONY Felica)は、RFID(Radio-frequency identification)技術の系譜…

東京:2014年1月

【承前】 一ヶ月以上前の続き。 - 再び新宿駅に戻り、都営地下鉄大江戸線に乗って六本木に向かった。 東京都港区六本木6-6=666に建つ「ピラミデ」を下から梯子する。「タカ・イシイギャラリー モダン」「ゼンフォト」を見て、エスカレーターに乗り「ワコウ…

ルシオラの居る:ガラクタと写真

【承前】 モンドリアンという解釈で良いのだろうか。 建物奥の階段を上がって行くと、展示室へ入る途は左右二手に分かれていた。「ここに二つの部屋があります。部屋へ入るのに短い方を選びますか。それとも長い方を選びますか」。深く考える事無く短い方を…

Quadrangle

「東京が変われば、日本が変わる」。恐らくそれは「西欧が変われば、世界が変わる」と同じ様な意味を持っている言葉だったに違いない。「東京が変われば、日本が変わる」が、「東京が変われば、東京以外は否応なく巻き込まれる」なのか「東京が変われば、東…

イーサン・ハントのフラッシュバック

【承前】 「PTSD」という言葉が精神医学に於いて初めて登場したのは1980年になる。「アメリカ精神医学会(APA)」が定め、「世界」的に使用されている精神障害に関するガイドラインである「DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders:精…

東京藝術大学卒業・修了作品展

それが「三年殺し」になるのか「七年殺し」になるのかは判らないが、東京の展覧会巡りで相当の距離を歩いたので、これを書いている身体の疲労はピークに達している。 1990年代以降の東京の展覧会巡りは歩く事こそを強いられる。東京のギャラリーの分布は、19…

再展示.com

嘗ての「人気番組」である「トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜(2002〜2006年)」で、頻繁に言われていた「統計学」上の信頼に足る最低限のサンプル数は「2000」だった。その「トリビアの泉」の瞬間最高視聴率は「27.0%(ビデオリサーチ関東地区)」とい…

超少女

今から32年前の1982年の正月の話になる。その年最初の発売になる「オリコン・ウィークリー 1月1.8日(1.2週)号」200円也の表紙には、「謹賀新年」という「版」が幾つも押され、そこに「松田聖子(当時19歳:現在51歳)の1月」「真田広之(当時21歳:現在53…

六本木クロッシング2013

一週間前に終了したばかりの「六本木クロッシング2013」の副タイトルは「OUT OF DOUBT! 来たるべき風景のために」だった。時に「OUT OF DOUBT!」は「疑うことからはじめよう」ともされている。「OUT OF DOUBT!(疑うことからはじめよう)」というのは、結構…

換骨奪胎

Somebody stole my gal Somebody stole my pal Somebody came and took her away, She didn't even say she was leavin'; The kisses I loved so, She's getting now I know And gee! I know that she Would come to me if she could see Her brokenhearted …

あいちトリエンナーレ 2013

名古屋市営地下鉄桜通線名古屋駅の壁面には、幅62.38メートル × 高さ2.17メートルの「高松次郎」がある。1989年制作の「高松次郎」のタイトルは、「イメージスペース・名古屋駅の人々」だ。現在は「東京三菱UFJ銀行」となった、嘗ては中京地区唯一の「都市銀…

新年

「季節を分ける」事から始まる「太陰暦の新年」とは全く異なる「太陽暦の新年」を迎えるに当たり、「太陰暦」をその「生活」からすっかり駆逐する事を選択した百数十年前に始まる「近代国家日本」で、その「国民」がやらねばならないとされている事と言った…

中原浩大 自己模倣

自分にとっての「中原浩大」の「出現」は、自分にとっての「谷岡ヤスジ」の「出現」と同じだった。「中原浩大」が「谷岡ヤスジ」と同じだと言っている訳では無い。それらの自分への「出現」の「意味」が同じなのだ。 そう思って改めて「谷岡ヤスジ」氏を調べ…

「人間と物質」展再展示計画

2013年の12月も28日という押し詰まりも良いところの東京の街に、斯くも多くの人がいるとは結構意想外だった。この「シンポジウム」に参加して来た。4時起きの日の18時は眠たかった。 「『人間と物質』展再展示計画」 基礎芸術が進める「再展示ドットコム」(…