2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

青梅「開示」

【承前】 しかしまた、普通の不穏は、それが普通であるが故に、「目を引く」力に於いて「弱い」と言えてはしまう。自分と一緒に「吉川英治記念館」に入ってきた、「観光(それは「鑑賞」であり「観覧」でもある)」を目的とした年配者の誰一人として、母屋の…

青梅「不穏」

【承前】 普通の何が不穏なのか。美術家の手が加わっていない離れの書斎はこうなっている。 ガラスで隔てられた「吉川英治」の側に、座卓、座椅子、座布団、書棚、書籍、茶碗、眼鏡、文鎮、萬年筆、地図、天眼鏡、箸置、硯、握り鋏、ゴミ箱…・。そして不在の…

青梅

「三丁目の夕日」の頃、東京の現在の市部は「郡」という名前だった。東京の「郡」は、「北多摩郡」「南多摩郡」「西多摩郡」の三多摩郡に分けられ、それぞれの上に、慣習的な形で「都下」が付いていた。生家でもある実家の住所は、東京オリンピックの年まで…

夏羽織

【承前】 「僕の事判る?」 そう言って、首都圏郊外のアートイベントで声を掛けてきた写真家。 「随分と痩せちゃったでしょ」 写真家は、現代美術の展覧会を、フィールドワークの様に撮影してきた何人かの一人だ。作家や美術館から求められて撮影する事もあ…

収集

未完の儘に荒れ果ててしまった壮大な邸宅の孤独な老人。力尽きて、3インチ程の大きさの世界の果てを持つ小宇宙の中の、小さな一軒家に雪が舞い落ちるスノーグローブを床に落とし、「Rosebud(バラのつぼみ)」という最期の言葉を遺して死んでいったのは、新…

具象と抽象

ある朝、あなたがなにか気掛かりな夢から眼をさますと、自分が寝床の中で小学校の校長に変わっているのを発見した。姿形は昨夜寝付く前と何ら変わっていなかったが、世界の中のあなたの役割だけが小学校の校長に変わっていたのだ。しかし、事の子細を観察、…

施錠

今でも日本の「田舎」では、施錠をしないという風習がまだ残っている。「田舎」のみならず、例えば「サザエさん」の磯野家(東京都世田谷区新町3丁目51番地)も、恐らく頻繁に施錠はしていないだろう。カメラ付きインターホンに出るサザエさんというのも、ド…