2010-01-01から1年間の記事一覧

偶像

言わずと知れたドラクロアの "La Liberté guidant le peuple(「民衆を導く『自由(マリアンヌ)』」)" 。アレゴリカルな「自由」を先頭に、それ自体もまたアレゴリカルな「民衆」が、これもまたアレゴリカルな「屍体」を踏み越えている。それぞれがそれぞ…

電話画

これは何かの建造物なのだろうか。パーティションで幾つかのユニットに分割され、全体に緩やかに湾曲したそれは、一部にヒンジと思われる構造を持っている。恐らくそこは可動部分であり、この構造体の内部に通じる入口があるのだろう。 こちらはその構造物の…

七色矮星

東京は野放図に夜が明るい街だ。暗いのと明るいのと、どちらが良いかと問われれば、多くの現代日本人は「明るい方」と即座に答えるだろう。 一昔前、クリスマスに向けての12月の夜を、ゴージャスに明るくしようと、住宅地規模でのクリスマス・イルミネーショ…

身分

この物件が、美術界の一部で、そして大きなおともだち(大友)の一部で話題だ。 日曜日朝の所謂「ニチアサキッズ」の時間帯、4〜6歳女児のテレビ視聴率が40%を超えるプリキュアシリーズの、現行「ハートキャッチプリキュア」後期のOPと、前作「フレッシュプ…

「書評」

瀬能仁美作 連続ケータイ小説「仁美」 嘗てユングは「外的客体に対する関係・外的な構え」を「ペルソナ」と名づけた。それは一種の「仮面」であり、その「仮面」は、他ならぬ自分自身という内的主体と、他方で環境という外的客体の要求を同時に満たすもので…

エイリアニズム

「宇宙人」は、現在の「地球人」の延長上に類推される活動をする「地球外生命体」とする事で、初めて「宇宙人」の名を冠する事が出来る。 そうでないと、それが「宇宙『人』」ではなく、「宇宙イヌ」や、「宇宙ネコ」や、「宇宙ニワトリ」や、「宇宙フンコロ…

おなじみ

日本政府観光局(JNTO)の調べでは、2009年の世界の国際観光客数の国別1位はフランスで、その数7,420万人。日本は例年下がり続けて昨年は33位の679万人とフランスの10分の1以下。国全体で、ルーブル美術館1館の850万人にも及ばない。兎に角「世界」からすれ…

「展評:屑」

大工道具界に於いて、永年「仕上げ」作業の頂点に君臨してきた「台鉋」の吐き出す「鉋屑」には、一定の「美しさ」があるとされる。台が極めて良く調整され、砥が完璧に行われた「台鉋」からは、部材を傾けるだけでその上を自然に滑っていき、向こうが透けて…

崇高

【承前】 「モナ・リザ」が描かれた頃(1500年)には、世界人口は4億人強だった。その内、全「ヨーロッパ」の人口は、6000万人台から8000万人台で、全「アジア」の人口は、2億人台から3億人台。「ヨーロッパ人」の世界人口に占める割合は1割台から2割台。世…

西洋の女

1909年(明治42年)、今から101年前にそれは発表された。著者は、94年前の大正5年(1916年)に49歳で没している。「小品」である事もあり、ここに全文を掲載する。 モナリサ 井深は日曜になると、襟巻に懐手で、そこいらの古道具屋を覗き込んで歩るく。その…

信仰

「偽札作り」のテーマは、これまでしばしば小説や映画などで取り上げられ、それはある種「ロマンティック」な扱われ方すらされてきた。そこには必ず「訳あり」の「偽札作りの天才」がいて、個人的復讐だか、生活の困窮だか、兎に角何らかの「理由」で、「犯…

暴力装置

21世紀の最初の年を描いた「2001: A Space Odyssey(邦題「2001年宇宙の旅」)」は、20世紀に於ける映画の最高傑作の一つと言っても過言であるとは言えない、だろう。 その冒頭は「THE DAWN OF MAN(人類の夜明け)」から始まり、「微妙な哺乳類」をイメージ…

「くすぶり」

【承前】旅行等から帰ってきて、「ああ、やっぱり家が一番」などと言うのは「老人」の特徴だとされている。「だったら始めから旅行に行かなければ良いだろう」という突っ込みも当然可能ではあるのだが、しかし「禅」の「十牛図」ではないが、或いはまた、「…

「ざんす」

【承前】 赤塚不二夫氏の「おそ松くん」の、最高の名キャラクターは、「イヤミ」氏であろう。彼は「フランス帰り」を自称する。しかし実際には、彼はフランスには行っていない様だ。赤塚不二夫公認サイト「これでいいのだ!!」の「イヤミのいえ」のバックグ…

「小」

青森県弘前市、岩手県盛岡市、岩手県遠野市、宮城県柴田郡村田町、宮城県大崎市岩出山地区、秋田県仙北市角館町、秋田県湯沢市、山形県山形市、栃木県栃木市、栃木県足利市、栃木県佐野市、茨城県古河市、埼玉県比企郡小川町、埼玉県比企郡嵐山町、神奈川県…

職業

誤解を恐れずに言えば、「漁撈」はそれ自体が「ギャンブル」的であると言える。決まった時間に「出社」して、何にせよ、単位時間辺りの「インカム」が入ってくる状態を「定期収入」と呼ぶならば、出漁しても少しも網に魚が掛からなかったり、その出漁すら天…

理由

まだ、美大の大学院生だった頃の「Lゼミ」での話。 生活臭に乏しい町。この町の住人は、デパートの外商で物を買っているという噂があった。その町の一角にある流行らない喫茶店で、その日のゼミは行われていた。 「君たちが美術を志したのは、どういう理由か…

資産

【承前】「週刊ダイアモンド 9月18日号」による「全国537私立大学」の「『財務状況』ワーストランキング」に上げられた「美術大学」のランキングは下図の通りだ。「美術大学」をピックアップするにあたっては、Wikipediaの「美術大学」の「私立大学」リスト…

窮迫

今週の「週刊東洋経済 10月16日号」の特集は、「本当に強い大学 2010」だ。「2010年版大学四季報 国公立・私立181大学の財務分析を一挙掲載」という「特別付録」の綴じ込み小冊子が付いている為に、通常よりも90円高い780円の「特別価格」となっている。 改…

重責

その「現代美術家」は、現在還暦を過ぎている。30数年前に、この作家が発表し始めた時には、この作家は十分に若く、自身の未来への視界は大きく開けていた。作家人生の「先行投資」の時期。「美術界」の言説もまた、その作家の試みが、やがて「美術史」に「…

スクラップ・アンド・ビルド

日本の書籍の返本率は平均で40%を越しているとも言われている。しかしそれは飽くまで平均値であり、返本率90%以上の書籍はざらにある。一般的な製造業に於いて、返品率40%の商品があるとしたら、それは単に生産の見通しに「失敗」しているとしか思えず、…

プリティ

通常ここでの「展評」は、「固有名詞」を極力出さない方向で書く事にしている。しかし今回のこれは「展覧会」ではなく「常設作品」であり、場所もまた「美術館」や「ギャラリー」ではない。しかも、これらの作者の「固有名詞」を出そうにも、その情報が作品…

非実在作者

今から3ヶ月前に、「FIFAワールドカップ」なるイベントがあった事を覚えている人はどれだけいるだろうか。それが「南アフリカ共和国」で行われていた事を覚えている人はどれだけいるだろうか。そのそれぞれの試合内容がどうであったかを詳細に覚えている人は…

「展評:追悼(後編)」

物故作家の展覧会。この作家はデビュー時期が同じだった。年齢は少しだけ向こうの方が上だったから、生年に於ける「昭和」のディケイドは異なっていた。それでもキリスト教暦に言うところの70年代末から80年代に掛けての同じ「時代」を共有していたと言える…

「展評:追悼(前編)」

「現代美術」は「現代美術」である。「現代美術」は「現代美術」の問題を問題にする。「現代美術」は「現代美術」の名の元に行われる一切合切である。因みにここでの「現代美術」を、ティエリー・ド・デューヴ風に「芸術」と言わないのは、「芸術」一般はそ…

「展評:土木」

「彫刻」の「起源」はどこにあるのだろうか。「美術史」の教科書を紐解けば、先史時代の「ヴィレンドルフのヴィーナス」辺りの「プリミティブ」な「人形(ひとがた)」等を、代表的な事例とする記述に出会う事が多い。しかしそれが「彫刻」ではなく、広く「…

「展評:インタラクティブ」

今から30数年前の事。自分の現代美術の「展覧会デビュー」は、映像作品の個展だった。但し、ここで言う「展覧会デビュー」とは、「ギャラリー巡り」の意味である。その最初の展覧会の作品の詳細な内容は、忘れようとしても思い出せないのだが、その作家は、…

「展評:土木(前段)」

最近、一部では「砂遊び」を「サンドアート(sand sculpture)」と呼ぶ習わしになっている様だ。 砂遊び砂遊び(すなあそび)とは、主に幼児・児童などが砂場や砂浜で砂を掘ったり砂山を作ったりして遊ぶことである。概要この遊びは、砂を掘ったり盛り上げた…

展評

ここ数年、しばしば某SNSで「展評めいたもの」を書いてきた。また別のサイトでも「展評めいたもの」を書いてきた。しかし今後、「展評めいたもの(以下「展評」)」はここに集約させる事にする。これまでに書いてきた「展評」は、どちらかと言えば「無名」の…

ブランド信仰

【承前】永く「不遇」であり、永く「無名」であり、永く「清貧」であり、その末に周囲に「理解」されぬまま没したという画家がいたりするかもしれない。しかしそうした「不遇」で「無名」で「清貧」な画家は、それこそ世に「履いて捨てる程」いる。換言すれ…