2011-01-01から1年間の記事一覧

類型

【承前】 アーティストのタイプを大別する方法には幾つかある。「男」か「女」か。これは結構大きい。「黒字」か「赤字」か。これもまた大変に大きな違いだ。「有名」と「無名」。現実的に極めて大きい。「聡明」と「蒙昧」。やはりそれは大きいと言えるので…

肉薯

【承前】 Google でそれを検索し、一番最初にヒットしたものを書き出してみる。勿論、これが「標準」であるとは言わない。 用意するのは、ジャガイモ3〜4個、牛薄切り肉200g、玉ネギ1個、ニンジン1/2本、糸コンニャク小袋1、サヤインゲン6本、塩小さじ1、だ…

怨嗟

【承前】 所謂「シンポジウム」にせよ、「フォーラム」にせよ、或いはまた、オンライン・オフライン上の「論争」や、展覧会が引けた後の「呑み会」に至るまで、「美術」関係の人間が寄り集まって、「美術」の抱える「問題」とやらを語る際、そこには常に一種…

危機

【承前】 ある人文科学系の研究サークル(関東地方)のMLからメールが来た。 月一回の会合を、関東地方の繁華街にある古色蒼然たる雑居ビルの一室で、関東地方在住者が集まって行われるこのサークルは、人文科学系の内でも「美術」に特化したものであると言…

反復

【承前】 今に至るも数多の日本人による「近代の超克」が止む事は無いが、その殆どの原形が、69年前のこの昭和17年の座談会に様々な形で現れている。これが平成23年の発言であっても、「大日本帝国陸海軍」が存在しない事と、旧仮名遣いである事以外は、或る…

切実

【承前】 その「伝説的に有名」な座談会の冒頭は、司会役の河上徹太郎による参加者の労を労うところから始まる。 今日は掛値なしに遠路のところ暑い中を集まつて下さつて、本当に有難うございました。これだけの人数の一流の人達が、全員揃つて賛成して下さ…

待望

【承前】 それが「善き事」であるとされているからこそ、「近代の超克」という定立はその価値を持つ。「近代の超克」が端的に「悪しき事」、或いは「近代のままで全く構わない」や、「一刻も早く近代になりたい」が支配的な場所では、「近代の超克」という定…

転換

【承前】 「きんだいのちょうこく」という音から「近代の彫刻」と脳内変換する人は多いだろう。特に「芸術」関係の人などは、「近代の彫刻?ああハーバート・リードね」という事で、" Modern Sculpture: A Concise History (Herbert Read) " を思い浮かべる…

拘泥

【幕間】 「僕は『壁派』だったからね」 その画家はそう言った。朧気ながら「壁派」と呼ばれる傾向を持つ一群の作品が、今から半世紀以上前に日本に存在した事を思い出した。 「その頃は貧乏だったから、絵具を買えなくてね。だから土を拾ってきて、それを絵…

弁明

【承前】 はてダのエントリーが更新されていた。いや自分のそれではない。敢えてそのエントリーをざっくりとカテゴライズすれば、それは「弁明」であろう。 べん‐めい【弁明・辯明・辨明】 〘名〙スル 1 事情などを説明してはっきりさせること。「事のやむ…

模範

【承前】 久し振りにメーラーの中に溜まりに溜まった「アート関係者約1000人による、情報交換・意見交換のメーリングリスト」aw-ml(の件名部分)に目を通していた。全くそれは何の気なしの気紛れであった。と言うか、「約1000人」だったんだと、今コピペし…

商売

【承前】 「今こそ、アートの力を。」 2011年5月のとある週末2日間に行われた「アートフェア京都」の「スローガン」である。烏丸という地方都市京都の、こじんまりとした中心部にあるホテルで、エレベーターを結婚式招待客と共有しつつ昇って行くと、やがて…

迷惑

【承前】 本来の予定では、今度こそ次にアドルノの「文化批判と社会」について続編を書こうと思っていた。しかし、次から次へとアドルノが草葉の陰で微苦笑するだろう文化の野蛮が引きも切らずに現れてしまうが故に、今日もまた脱線なのである。果たして本線…

自首

【承前】 本来の予定では、次にアドルノの「文化批判と社会」について続編を書こうと思っていた。こうした有事の際には、必ずと言って良い程、文化という野蛮(アドルノ)が、社会の混乱に乗じる形で、野蛮のブルドーザーを出動させるからだ。 有事になると…

野蛮

【承前】 ”Nach Auschwitz ein Gedicht zu schreiben, ist barbarisch”。 通常日本語ではそれは「アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である(「ちくま学芸文庫」)」と訳されている。テオドール・W.アドルノ(Theodor W. Adorno)の「プリズメン—文…

擬制

【承前】 東京新聞 2011年5月2日 07時08分 http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011050290070836.html 「それ」を「愉快犯」の仕業によるものとするも、極めてディレッタント好きのする「芸術テロリスト」の仕業によるものとするも大した問題では無い。そ…

誘導

【承前】 事故評価引き上げ レベル7へ 東京電力の福島第一原子力発電所で相次いで起きている事故について、経済産業省の原子力安全・保安院は、広い範囲で人の健康や環境に影響を及ぼす大量の放射性物質が放出されているとして、国際的な基準に基づく事故の…

アイデンティティ・クライシス

今から20年以上前に「湾岸戦争(Gulf War)」と呼ばれる「戦争」があった。それを「正確」に記している解説があるかどうかは判らないし、そもそも何をして「正確」であると言わしめるかも判らないが、取り敢えず朝日新聞社の現代用語事典である「知恵蔵」で…

頑固爺

それでも人は忘れてしまうのかもしれない。大きな戦争を忘れてきた様に。それはもしかしたら人の「健全」の証なのかもしれない。それを「健全」と言って良いものならば。 「昔こんな事があったんだよ」。大きな戦争の事を知っている人達の話を、大きな戦争を…

陳列

ルーブルの大ギャラリーである。ユベール・ロベール(1733年〜1808年)の筆による「ルーブル宮のグランド・ギャラリー改造計画案(1796年)」だ。 見事なまでの二段掛け、三段掛け。他の資料を見てみると、嘗てのルーブルでは四段掛け、五段掛けも当たり前で…

入試

自分の予備校の担当講師は、当時の東京芸大大学院生だった。自分の美大受験の合否に関して、彼は絶対の自信を持って「お墨付き」を与えていた。「こんな絵を描いていたら、お前は確実に落ちる」。それを言われても、特別「奮起」をするという事は無かった。…

落とし所

【承前】 「プロ」の現代美術作家というのが可能なものなのかどうかは判らない。 大辞泉(Mac OSX「辞書」)で「プロ」を引けば、 プロ 1 《「プロフェッショナル」の略》ある物事を職業として行い、それで生計を立てている人。本職。くろうと。「その道の—…

早生

西国で二つ程展覧会を見た。 一つはこの時期ならではの卒業制作展。もう一つは「プロ」の展覧会であった。果たして現代美術作家に「プロ」という呼称が本当に相応しいかどうかは判らないが、習わしとしては「プロ」と呼ぶ事もあったりするから、ここではそれ…

スペシフィック

【承前】 「優れた」作品は、作品論や作家論を導き出す力があるとされる。それより前に、まずは人々の口の端に上らせる力があるとされる。 確かに「優れた」作品とされるものへの言及は多い。一方で、それが「優れた」作品であるかどうかは別にしても、「話…

マナー

美術館には見る為、それ以前に、そこに入る為に「遵守」するべき「法則」というものがある。 大人には「分別」というものがあり、通常それは既に身に付いているとされる。しかし「元気印」の子供には、まだそうした「分別」が備わっておらず、子供と作品につ…

第三芸術

"Ars longa, vita brevis, occasio praeceps, experimentum periculosum, judicium difficile." 「アルス・ロンガ、ウィータ・ブレウィス、オッカースィオー・プラエケプス、エクスペリメントゥム・ペリクロースム、ユーディキウム・ディッフィキレ」。 古代…

得体

「得体が知れない敵」よりも、「得体を知り過ぎている敵」の方が、遥かに厄介な存在だ。「得体を知り過ぎている敵」に対する戦略こそが、シミュレーションではない上級者編の「戦い」には必要だろう。トラブルの「発生源」に対して「得体が知れない敵」など…

デパート

【承前】 デパートの搬入口から店内に入ったのは一度や二度ではない。その多くは、自分の作品を携えてデパートの定休日に入ったものだ。行き先は店内で美術品を扱うコーナーの事もあれば、一般のテナントの事もあった。 デパートの定休日の搬入口は、商品の…

百貨店

蛍の光が流れ、従業員一同が出入口に立ち、それまでにそこでした事がない程の大量の買い物を、その日に限って実行した客が家路に向かう姿を、深々と頭を下げて見送る。そして最後の客が店外に出た後、シャッターが降り始め、まるで劇場の緞帳が下がるかの如…

道具「セット物」

【承前】 今日、日本人の大多数の人生に於いて、その最初の画材というのは恐らく「セット物」になるのだろう。それはクレヨンであったり、色鉛筆であったり、水彩絵具であったり、場合によってはいきなり油絵具であったりするかもしれないが、いずれの場合で…