2010-01-01から1年間の記事一覧

烙印

良く言われる事だが、「ブランド」の語源は余り芳しいものではない。「New Oxford American Dictionary」にはこうある。 2 an identifying mark burned on livestock or (esp. formerly) criminals or slaves with a branding iron. • archaic a branding ir…

余裕

これは飽くまで個人的な経験則であり、従って「全ての芸術家はこうである」などと言うつもりは毛頭無い事を予め断っておく。とは言うものの、個人的にはそういうケースを見聞する事が、決して少なくはないというのもまた確かなのではある。「芸術は心の余裕…

巧技

【承前】 自分の父親は、所謂「社員職人」「企業職人」だった。日本最大手の印刷会社の中にいて、「細紋彫刻」の技術者として定年まで勤めていた。そもそもその会社の沿革自体が、民間による「細紋彫刻」の「歴史」から始まっている。それ故に、「筋」から言…

貴賎

嘗てその「アーティスト」は「日本現代美術」のそれなりに「重要な作家」だと目されていた。現在の「基準」からすれば、それは「無きに等しい」や「児戯に等しい」のかもしれないが、それでも1980年代なりに、「日本現代美術」には「アートシーン」が存在し…

【Part3】「アリアス」が「三田佳子」になった際に、それを見た人間(日本人)の口を衝いて出てきた感想の多くは、「外人 → 日本人」になる事を「悲惨」と捉えるものであった。しかし一方で、150年前の日本人は、初めて「接近遭遇」した「外人」の顔を、ある…

【Part2】 「外人 → 日本人」の第二弾は肖像彫刻である。 「アリアス」像が指し示す先にあるのは、「アリアドネ」というイデアールな存在である。仮に「彫刻家」が、制作時にレアールなモデルを前にしていたとしても、それは飽くまで一般化された「美人」を…

【前日記の幕間】 【Part1】 「Photoshop を使用して、外人を日本人にする事は可能か」という質問を受けた事がある。この場合の「外人」は、所謂「コーカソイド」を意味している。当然それは、Photoshop の「ゆがみ」フィルタで実現可能な、単純なトランスフ…

標準

【承前】若き30代のカール・セーガン氏が手にしているのは「パイオニア・プラーク(Pioneer plaque)」と呼ばれる、パイオニア探査機の金属銘板である。 パイオニア探査機の金属板(略)この金属板は1972年と1973年に打ち上げられた宇宙探査機パイオニア10号…

宇宙

1980年代の日本に於いて「宇宙」と言えば、専ら「カール・セーガン」だった。「本国」アメリカでもそうだったのかもしれない。恐らくそうだったのだろう。1980年代の日本に於ける「宇宙」が、「糸川英夫」に代表されてしまう様に。1990年代の日本に於ける「…

善意

「アート」が世界に満ちていくのは、専ら「善意」に由来する。そしてこの「アート」が世界に満ちていくのも、これもまた「アート」の1ジャンルであるが故に「善意」に由来する。これらが「悪意」に基づいて制作され、それが世界中にばらまかれるのであれば…

無声電視

海外に行くと、多くの場合、現地のテレビを面白く見ることが出来る。言葉が通じないからだ。異邦人である自分にとって、付けっぱなしのテレビの中の人物たちは、意味なく笑い、意味なく怒り、意味なく泣く。何が視聴者の購買欲を喚起するのかが全く判らない…

シミュレーション・イズム

半ば「都市伝説」と化した話の一つに、小学校の卒業記念に、卒業生がプールの底に描いたキャラクターに対して、その版権を持つ米国系企業が、著作権違反であるとして訴訟をちらつかせて、結果的にその絵は塗りつぶされたというものがあった。1987年7月10日の…

小品

「小さな作品」について考えている。ウェブ評論誌「批評の庭」を主宰する小金沢智氏のツイートで、「小品」問題が語られていた。 - >たまに思い出す、びっくり発言①>著書が何冊もある某美術評論家T・S氏のこんな主旨の発言:「手で抱えられる程度の作品は「…

理不尽

何故、ゴジラの「エピソード1」は「夜」のシーンが多いのだろうか。それには映画制作上の数々の「事情」もあるだろう事は想像に難くない。要するに、暗ければ「粗が見え難い」という、そうした事情が無いとは言えないだろう。しかしそれは、結果的に「ゴジラ…

樹海

【承前】 「恐怖の形象」を出す事無く、「怪物」を描くシナリオは、例えば以下の様な物になるだろう(以下フィクション、念為)。 - シーン1午前11時。銀座松坂屋。店内は女性で溢れている。そこに血相を変えた一人の女性が現れる。「さっきお宅で買ったバ…

恐怖の形象

数日前の話。日曜日にクルマで移動中、TBSラジオの「爆笑問題の日曜サンデー」を聞いていた。無音に絶え切れなくなった時にチューニングしたりする。太田光氏には芸術系大学卒業生の「典型」を常に感じる。その意味で、太田光氏には何の目新しさも感じない。…

30年分

【承前】今から30年前の神田には「三州屋」という一杯飲み屋があったが、今でもそれは当時と変わらない佇まいで存在している様だ。神田画廊街の展覧会初日は大抵月曜日だったが、その二次会、三次会は、この「三州屋」に雪崩れ込むというケースが多かった様…

神田

今は昔。それは今から30年近く前の80年代初頭に遡る。当時の東京の現代美術シーンの「中心」の一つは、まだ辛うじて「神田」に存在していたと言える。言うまでもなく、その理由の一つは、戦後の日本現代美術界の「巨人」の一人としてカウントされるだろう「…